2011年1月17日月曜日

厚い本に挑戦したものの・・・

 
由佳の本棚、今月は、「厚い本」をご紹介しました。
お正月休みがあったから「厚い本にしよ!」と思ったわけですが、自分の首を自分で締めたようなものでした。
大変だったけど、どの本も面白かったです!!
 
 
江戸時代の浮世絵師・東洲斎写楽は、わずか10カ月の間に、多くの作品を残し、 消息不明になりました。
写楽とは誰なのか、本当に実在したのか、どうして、同じ時代に活躍していた人が、
写楽について語らないのか、その謎に、島田荘司が挑みました。
主人公の男性は、塾の講師。かつて、大学で江戸美術を教え、その後、浮世絵を扱う美術館で学芸員したんですが、職を追われたんです。
この男性が、驚くほどうじうじしていて、読んでて腹が立つの!!
最後にたどりついた、写楽の正体以外の結論にも、納得できなかった!!
腹が立つことばかりだったけど、それでも読むのが止まらないんです。
本には、男性が、写楽が誰かを探す現代のパートと、江戸時代の浮世絵師たちが登場するパートの二つが交互に進行していくんですが、どちらのパートも気になって、どんどん読み進んでいきました。
寝るべきか、このまま本を読むべきか、毎夜、悩んだ1冊です。
 
  
イタリアで絵画修復士として働く御蔵瞬介の周りで不思議な現象が起き、それを解き明かしていく物語。
この本で楽しかったのは、謎を解く鍵が絵画にかくされているという点です。
ボッティチェリの「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語」や、ミケランジェロの「最後の審判」、「アダムの創造」が登場します。絵画も写真があるので分かりやすいんです。
当時、どんな情勢で、どういう理由から画家は絵を描き、どんな思いで描いたのか。
当時の天才と言われた人たちの、製作に対する思いや葛藤が伝わってくる一冊です。
 
 
主人公は、昭和30年に大阪で生まれた、作田又三。
この又三さん、ものすごい人生!!
成功と失敗で言うなら、失敗なんだけど、どこまでも逞しく生きる姿は、圧巻です。
子どものころから喧嘩が絶えない又三ですが、人生の転機では必ず成功します。
でも、同時に失恋して、全てを投げ出すんです!!
大学も失恋でやめたし、仕事も失恋でやめたし、結婚も妻の不倫でやめて仕事も辞めたし、とにかく恋愛体質なんです!!しっかりしろ、又三!!!!
私とはまったく性格も人生の進め方も違うと思ってたけど、 ところどころで、駄目な部分が重なってるの。
そこが息苦しくって、読みながら不安にかられました。
たぶん、男性は好きな本だと思います。
 
 
厚い本ばかり読んで疲れた私に、ディレクターが貸してくれました。
主人公は、フリーラーターの棚。もちろん本名ではありません。
仕事で編集者と打ち合わせをしていた喫茶店の壁に、ターナーの複製画がかかっていてたことから、棚がペンネームになりました。
そんな棚さんの何気ない日常をほんわか描いていると思いきや、棚さん、ほんわかしたまま仕事でアフリカに行くんです。
仕事+亡くなった知り合いの足跡をたどりるんですが、知り合いの足跡には呪術が含まれます。呪術!?
本の中で繰り広げられる光景は、明らかに非日常的で、怖いものなんだけど、棚さんの性格か、ホンワカ旅をしながら読んでいるようでした。
女性は、好きになる人が多そう!!


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ここからは番外編。
画家の安野光雅さんが、5年をかけて口語訳した本です。
装丁はもちろん、各章ごとに安野さんのイラストがのっているので、ページをめくるのがものすごく楽しみでした。
安野さんの「まえがき」によると、この「即興詩人」を「無人島に持っていく」としている人が多いとのこと。 これって、女性が読むより、男性が読んだほうが、その思いが強いかもしれません。
私は、主人公が年月を積み重ねていく様子を、“近所の人目線”で読み進めていきました。
 
 
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